和菓子の木型とその継承手段としての3Dスキャン
1.和菓子の木型について
木型とは、江戸時代に誕生したといわれる和菓子をつくるための道具です。
花や風物など様々な図柄を左右対称・凸凹を逆にして木材に彫り、それを2枚重ねて使います。
木型で作られる和菓子の中でも代表的なものが、「空から舞い降りる雁」からその名が付けられたともいわれる雅で上品な菓子、落雁(らくがん)。米粉などの穀類の粉と砂糖を混ぜ、打ち抜いて作られるこの落雁には木型は欠かせない道具なのです。
木型の形には持ち手のついた羽子板状のもの、枠のあるもの、組み合わせになっているものなど様々な形状あります。主に樹齢百年級の桜の木材に、意匠をこらした図柄をノミや彫刻刀を何種類も使用して、1丁*ずつ繊細に刻みこむ木型には、職人の技が結集されています。特に江戸時代の木型には美術的価値の高いものも多く、老舗の菓子屋などでは今でも大切に保存されています。
現在では、木型職人の数も少なくなっており、今では専業の職人は5,6人しか存在しないと言われています。更に木型に最適な樹齢を重ねた桜材の入手も困難になってしまいました。それでもこの100年以上前から続く伝統的な技術や技法で作られた木型という和菓子文化を、後世に継承していくために、今は3Dスキャンという保存方法があります。
*1丁:木型の数え方の単位は「丁」
-
2.古い木型として
製作から30年以上経ているものも多く、当初は反り、ゆがみもなかったものが経年変化により、変形してきています。
3Dスキャンではそのままの形状をデータ化しており、変形部分はそのままにしています。
長年使用したことによる痛みや変色などは、そのお店の歴史であり、また伝統でもあります。よってオリジナルの木型は何も手を加えず、3Dスキャンデータとして後世に残します。 -
3.新しい木型として
3Dスキャンデータから加工用データを経て、複製の新しい木型を作製します。
この場合、先の通り反り、ゆがみもそのまま反映されてしまいますが、木型としての利用価値も考え、本体と蓋との合わせ面は、なるべく水平になるよう調整しております。
(必ず隙間がない保証ではありません)
そのため長さ×幅×高さ 古い木型より寸法を若干修正する場合があります。
またダボ(合わせ凸凹)部分も位置を変更したり、サイズ変更を行う場合もあります。
-
菊
-
亀
-
鯛
-
梅
-
蓮
4.材料について
古い木型の多くは山桜 (バラ科サクラ族学名、Cerasus jamasakura)を使用していますが、非常に入手が困難になっており、木型職人さんへの影響、ひいては和菓子店様への影響も考慮し、類似した特性の材木を使用いたします。その中で樺(カバ Birch)を使用します。見た目がサクラに近く日本国内では建築、家具などの分野でサクラと言えばカバを指すことが多く、カバサクラとも言われることがあります。産地によりホワイト色、ピンク色の差がありますが、いずれも個体差があり明確な種別は無いようです。いずれも天然木材を使用しているため、個体差は避けられないことや貴重な資源を生かすためには、生産LOTによりばらつきが生じることをご了承願います。
-
ヤマザクラ
-
カバ日本産
-
カバ北米産


